感想
ハチさんが大活躍する話。
主人公の恋敵である安夫がヒロインの初江に襲いかかろうとする場面で、ハチさんが安夫の手首・項(うなじ)・尻の3箇所を刺して安夫を撃退したのには思わずガッツポーズが出た。
また、乳に関する描写が妙に生々しいのも特徴的。
さて、冗談はさておき…
前に読んだ「仮面の告白」と同様、豊富な語彙からの情景描写には三島由紀夫氏独特の凄みを感じる。ただ、「仮面の告白」にあった狂気性が消滅していて、ちょっと呆気ない感じがあった。
最後まで牧歌的で純愛なハッピーエンドで終わり、私には少し眩しい話であった…(泣)
それと、相変わらず童貞の描写が上手ですね。あの生々しくて直情的な感じ。
好きな部分は、初江が涙を拭わずに微笑む描写「雨の降っているうちに射しだした日のよう」と、
千代子が漁へ出港する新治から去り際に褒められた後の描写「そうして岸には幸福な少女が残った」です。
どちらも儚く綺麗な表現だと思いました(語彙不足)
評価:★★★☆☆
書籍情報
著者名:三島由紀夫
出版社:新潮文庫
出版日:2005/10/1
ジャンル:小説
ページ数:224ページ