読書記録⑱:君主論(★★★★☆)

読書

感想

さすが歴史の教科書に載る本は違うな、という感想。

この本を書くために、どれほど過去の戦争を研究しどれほど自分で考え抜いたのか…と思わずにはいられない。驚きなのは、文章構成がとても精錬されていること。1500年代に書かれた本とは思えない。

一例を挙げると、
国の戦力の種類にはA,B,C,Dの4つがあります。BとCは選択するべきではないと考えます。理由は、過去の戦争で~~からです。残るAとDですが、Aが良いと考えます。理由は、かつてフランスが~~からです、といった具合に理路整然と書かれている。

つまり、取り得る選択肢を全て提示した上で、歴史に照らし合わせつつそれぞれのメリット・デメリットを自分の考えと共に述べている。ファクト(=歴史)を調べまくって自分の考えを述べる感じ、なんか結構コンサル感がある。笑

第1章の前に差し込まれている献辞も面白い。
特に、「世間のおおかたの著述家は、自分たちの叙述に体裁をつけようとして、勿体ぶった修辞や美辞麗句、巧言なり心にもない文飾など使いこなしますが、ここではそうした面倒な飾りをはぶきました」という記述が好き 情報商材屋さん聞こえてますかー!?という感じ。

君主論が執筆された背景も中々趣深い。
マキャヴェリは色々あって公職から追いやられたのだが、夜は官服着て執筆活動するほど復帰を渇望していた。そんな状況下で友人からの手引もあり、君主に献上しようと執筆された本が君主論である(そして実際に公職に復帰できた)。
普通なら君主へのゴマすりだらけになりそうなところ、内容を見ると真に必要な記載に絞って書かれているあたり、この本にかけた本気度が窺える。

時折見える残酷な記述も国の繁栄を思って本気で考えて書いたからなんだろうなと思った。
変に聞き心地の良いことは言わず、ひたすら正論で殴るスタイルが好き。やる時は徹底的にやれ、とか、君主は愛されなくていいから恐れられよ、とか、君主は戦争のことだけ考えてればいい、とか。

戦争の勝ち方や国の治め方は今の時代役に立たないけど、チームを(ある種冷酷に)まとめ導くリーダー像を学ぶには良いかもしれない。
何にせよ、歴史的名著ということで一読の価値はあると思う。

評価:★★★★☆

書籍情報

著者名:ニッコロ・マキャヴェッリ
出版社:中央公論新社
出版日:2018/2/13
ジャンル:古典
ページ数:267ページ

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