こんにちは、ばいおです。
今回は、TRMモジュールの概要について解説します。
TRMモジュールとは
TRMモジュールは簡潔に言うと、社債・借入金・貸付金・有価証券といった金融商品を管理し、資金の調達・管理業務のサポートを行うモジュールになります。
なので、ユーザ側でTRMモジュールを使用するのは経理部の財務担当の方になるかと思います。
主要なモジュールであるFI(財務会計:FInanical accounting)やCO(管理会計:Controling)・SD(販売管理:Sales and Distribution)・MM(在庫購買管理:Material Management)と違い、TRMモジュールを導入している事例はあまり多くないです。
その分コンサルタントも少ないので、TRMモジュールの導入経験がある人材は希少性があるとも言えますね。
ちなみにTRMモジュールは、正式には「Treasury and Risk Management(財務/資金管理およびリスク管理)」と言い、SAPのFSCM(ファイナンシャルサプライチェーンマネジメント:Financial Supply Chain Management)と呼ばれる機能を構成するコンポーネント群の1つとなります。
TRMモジュール導入のメリット
TRMモジュール導入のメリットは何と言っても、FIモジュールと連携することで金融商品取引に係る様々な伝票をシステムから自動起票できることです。
(逆に言うと、FIモジュールありきのTRMモジュールなので、FIモジュールが導入される/されていることがTRMモジュール導入の前提になります。)
例えば、資金調達のため長期借入金の契約を締結したとします。
(※長期借入金は返済期日が1年以上の借入金)
すると、以下のような仕訳を起こす必要があります。
(借方)預金勘定 / (貸方)長期借入金
長期借入金は借金なので、多くの場合支払利息が発生します。(以下仕訳)
(借方)支払利息 / (貸方)預金勘定
もちろん返済もしなくてはいけないですね。
一括返済契約ならば返済の仕訳を起こすのは1回で済みますが、分割返済契約ならば返済するたびに仕訳を起こす必要があります。(以下仕訳)
(借方)長期借入金 / (貸方)預金勘定
この他にも、支払手数料や長短振替(長期借入金から短期借入金への振替)、費用の見越繰延処理など金融商品取引に関する仕訳は多岐にわたります。
もし、金融商品取引を管理するシステムと伝票を起票するシステムとが連動していない場合や、金融商品取引をエクセルの台帳で管理している場合、担当者は金融商品取引の管理システムや台帳を見ながら手作業で伝票を起票することとなります。
扱っている金融商品取引が少数ならば、まだ手作業での伝票入力に割かれる工数はそこまで多くないでしょう。
しかし、これが規模の大きい会社ともなると何十・何百もの金融商品取引を管理している場合があります。
それら全ての金融商品取引について、仕訳を起こす必要がある度に、手作業で伝票を起票していくのは中々骨が折れる作業になりますし、金額や勘定を誤るリスクもあります。
(しかも、金融商品取引に係る仕訳は、その性質上概して高額のことが多く、誤ると財務諸表に与えるインパクトも少なくないです。)
この問題を解決するのがTRMモジュールになります。
TRMモジュールを使用して金融商品取引のデータを登録しておけば、手作業で伝票を起票することなく、システムから伝票起票することができます。
TRMモジュールに登録した通りの伝票が起票されるので、「伝票作る時に金額1桁間違えちゃった、てへ!」といった手作業によるヒューマンエラーは起こりえません。
また、複数の金融商品取引について一括で仕訳を起こすことができるので、金融商品取引関連の伝票起票に割かれる工数は大きく削減されます。
もちろん、金融商品取引の登録にあたっては、仕訳を起こすのに必要な情報を正確に入力する必要がありますが、それはどの金融商品管理システムでも同じですよね。
TRMモジュールならば、金融商品取引に係る様々な仕訳をシステムから起こすことができますし、銀行口座や支払処理の設定が適切にされていれば、銀行への振込まで自動化することが可能です。
(全て標準機能で実現できます!)
以上がTRMモジュール導入のメリットとなります。
関係部署は少ないかもしれませんが、多数の金融商品取引を扱っているクライアントにとっては、導入するに値するモジュールとなるのではないでしょうか。
TRMモジュールの主要なトランザクション
TRMモジュールの主要なトランザクションを紹介します。
金融商品取引登録(トランザクションコード:FTR_CREATE)
社債・借入金といった金融商品取引の内容を登録します。
この際、登録した金融商品取引に対応する取引番号が自動生成されます。
登録したい金融商品取引の種類によって、入力する項目は変わります。
例えば、借入金ならば、借入金額・返済日・返済頻度・返済金額(分割返済の場合)・金利・取引先・支払元口座などを入力します。
金融商品取引編集(トランザクションコード:FTR_EDIT)
金融商品取引登録(FTR_CREATE)で登録した金融商品取引の照会・変更・削除を行います。
業務フロー上、担当者が登録した金融商品取引を上長が決済する必要がある場合は、このトランザクションから金融商品取引の決済を行うことができます。
フロー転記(トランザクションコード:TBB1)
登録した金融商品取引の内容に従い、伝票転記を行います。
伝票転記を行いたい金融商品取引の取引番号やフロー(取引)の日付を入力し、実行します。
取引番号は複数入力することができます。
このトランザクションにより、指定した日付までに発生する複数の金融商品に係る仕訳(返済や利息支払等)を一括で起こすことができます。
おわりに
今回はTRMモジュールの概要について記載しました。
TRMモジュールを扱った経験のあるコンサルタントはまだ少数だと思いますので、機会があれば挑戦してみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。