こんにちは、ばいおです。
今回は、SAP FI(※)コンサルとして最低限知っておくべき簿記知識について解説します。
(※FIはFinancial(財務会計)の略)
知っておくべき簿記知識
以下に記載する内容は、どれも経理部の方にとっては常識レベルの話です。
しかし、簿記に一切触れたことがない方にとっては、聞いたことのない話となるでしょう。
SAP FIのコンサルとしてプロジェクトにアサインされたのであれば、やり取りする相手は経理部の方になります。
経理部の方と話をする時に、常識レベルの会計知識がないと「この人大丈夫かな・・・」と思われ、信頼を損ねる結果になりかねません。
会計の世界に今まで足を踏み入れたことがなくて、いきなりFIのプロジェクトにアサインされた方にとってみれば
いや、簿記とかやったことないから、そんなの知らないし。。。
と、思うかもしれませんが、クライアントにとってみればそんなことは関係ありません。
せめて最低限の会計知識は身につけた上で、仕事に臨みましょう。
そうしなければ、クライアントとの信頼関係の構築もできないですし、通常業務に支障をきたしかねません。
時間が許すのであれば、せめて簿記3級レベルの知識は習得することを推奨します。
(簿記3級なら、2週間ほどやれば参考書の内容は理解できるようになるかと思います)
それでは、内容に入っていきましょう!
借方・貸方
1点目は「借方・貸方」です。
会計の規則では、記録が必要な取引が発生した場合、伝票を起票して記録します。
伝票起票の際には、取引内容を2つの勘定科目(※)に分け、それぞれ左と右に金額と共に記載します。
(※勘定科目については後述)
この時、起票された伝票の左側を「借方」、右側を「貸方」と呼びます。
(例)通信費10,000円を預金から支払った場合
借方 | 貸方 |
通信費 10,000 円 | 預金 10,000 円 |
覚え方ですが、借方は「かりかた」の2文字目「り」が左払いなので左、貸方は「かしかた」の2文字目「し」が右払いなので右、という覚え方がよく使われます。
また、1つの取引を借方と貸方に分けるので、1伝票の中で必ず借方と貸方の金額は一致します。
SAPでは「転記キー」という項目で借方・貸方を制御しています。
ちなみに、SAP標準の伝票照会画面は借方・貸方が左右に分けて記載されるフォーマットでは表示されません。
明細(勘定科目単位の取引)ごとに縦並びで表示されるので、転記キーを見て借方か貸方かを判断しましょう。
勘定科目
2点目は「勘定科目」です。
勘定科目とは、取引内容を伝票へ記載する際に使われる分類項目です。
どの取引を何という勘定科目に当てはめるか厳密には定められていませんが、ある程度決められたルールに沿って勘定科目は作られます。
(対外的に公表(財務諸表など)する際や、経営判断の目安として使用されるため)
勘定科目には、「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」という5つの分類があり、必ずどれかに属します。
このうち、「資産」「負債」「純資産」は貸借対照表、「費用」「収益」は損益計算書に記載されます。
(貸借対照表・損益計算書は、どちらも対外的に公表が義務付けられている財務諸表の1つです)
また、増減時に借方・貸方のどちらに記載するか、以下の通り5つの分類によって異なります。
勘定科目の分類 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
資産 | 金額の増加 | 金額の減少 |
負債 | 金額の減少 | 金額の増加 |
純資産 | 金額の減少 | 金額の増加 |
費用 | 金額の増加 | 金額の減少 |
収益 | 金額の減少 | 金額の増加 |
「借方・貸方」の説明の際、「通信費10,000円を預金から支払った場合」の例を示しました。
その例では、「通信費」は「費用」の増加になるので借方に、「預金」は「資産」の減少になるので貸方に記載されています。
SAPでは「勘定コード」という項目で勘定科目を管理しています。
ほとんどの場合、勘定コードは何かしらのルールに基づいて採番されるので、プロジェクト途中でアサインされた場合は、そのルールを確認するのがよいでしょう。
【勘定コード採番ルールの一例】
勘定コードの頭1桁目が、「1」の場合は「資産」・「2」の場合は「負債」・「3」の場合は「純資産」・「4」の場合は「費用」・「5」の場合は「収益」
発生主義・実現主義
3点目は、「発生主義・実現主義」です。
伝票起票の際には、伝票に記載する取引が行われた日付を記載します。
もし、この取引の日付を好きなように決定できたら、年度をまたいで日付を記載することで損益を調整したりして、いくらでも粉飾決算することが可能になってしまいますね。
なので、取引が行われた日付の記載にはルールがあります。
そこで登場するのが「発生主義」「実現主義」です。
会計基準上、費用は「発生主義」収益は「実現主義」で認識するのが原則となっています。
「発生主義」とは、取引が発生した時点の日付で費用や収益を計上するという考え方です。
金銭の増減は関係なく、取引によって費用の支出額または収益の収入額が確定した時点の日付を記載します。
しかし、発生主義で収益を認識してしまうと、まだ金銭を実際には受け取っていないのにも関わらず、あたかも取引の瞬間に収益を得たかのようになってしまいます。
ひょっとすると、取引後に得意先が倒産し、金銭を受け取ることができなくなるかもしれません。
そのため、収益に関しては、「発生主義」ではなく「実現主義」によって計上します。
「実現主義」とは、役務提供およびその対価を受け取った時点で収益計上するという考え方です。
費用計上と異なり、収益計上は他社に依存する分、不確実なものになります。
そのため、保守主義の原則(プラスは慎重にマイナスは漏れなく反映させるべしという企業会計原則の1つ)から収益は費用より計上基準が厳しく定められています。
(尚、現金の入出金があって初めて取引とする現金主義という考え方もありますが、大企業で採用されているケースは稀です)
SAPでは「転記日付」という項目で計上日付(取引の認識日付)を管理しています。
「伝票日付」という項目もありますが、これは単に伝票が作成された日付を表しています。
会計上、重要なのはもちろん転記日付の方になります。
経理部は、設定できる転記日付を月(会計期間)単位でオープン・クローズすることで、伝票発行者が好きなように転記日付を設定できないよう制御します。
おわりに
今回は、FIコンサルとして最低限知っておくべき経理知識について解説しました。
いやいや流石にそんなことは皆知ってるでしょと思う方もいるかも知れません。
しかし、FIの導入プロジェクトに初参画した私の上司は「借方?なにそれ美味しいの?」状態だったという経験があったので、今回記事にしようと思いました。
(最終的にその上司は、借方を「カーブ」、貸方を「シュート」というパワプロのモブピッチャーみたいな覚え方をしていましたが、定着したかは定かではありません。)
繰り返しになりますが、ここで記載したことは本当に最低限の内容ですので、余裕があれば簿記3級の参考書を読み込むことをお勧めします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。